Micro Vert 3.5MHz 設計手順

まえがき 
     始めるに当たり、今回の3.5MHz用の狙いを決めておく。7MHz用Micro Vertを2本作成し、その特性、メリット、デメリットを経験的に知りました。その内容を自分なりのアイディアとしてアンテナに入れ込む事を目的としてみます。私の運用スタイルはデジモードを90%位運用しています。最近のコンディションを考えると、7MHz用のMVを改造し3.5MHz用にする事にしました。又10MHz以上は運用スタイルにもよりますが多素子アンテナのほうがC/Pが良いので、今回はトライしていません。比較のアンテナは釣竿6mで2本のエレメントとして、ATUで直接ドライブする地上高7mの短縮DP(3.5〜50MHz)で評価した。しかしHF帯に於ける評価は、パラメーターが多くあり単純な比較は避けるべきで、「長期間の実用でストレスなしで使えるか」を判断基準にしています。
狙いの項目  

@ 我家の設置条件ではステーが取れないので、高さはどの位伸ばせるか?台風時は簡単に短縮できるか?

A @の条件から出来るだけトップ部を軽く出来るか? (出来ればエレメントは太く、長くしたいが・・・)  

B コイル、巻線径は出来るだけ太くしたい。(実際の比較は無いが気分的なもの?)  

C 3.5MHzの飛びから、水平(近距離)、垂直(遠距離)成分を出したい。(森OMのMMANAでのシミュレーション)  

D 購入部品は出来るだけ近くのDIYや100円ショップで手に入る物を使うこと。

各パーツの決定:(原案DL7PEのHP、JA1SCW局日下氏のHP、CQ誌 2004年12月号より参照)

◎同調周波数を3.530MHzとする:(雨や雪が積もってもVSWR1.2以内が3.520MHzにあるようにした)
@ トップ・エレメント (ラジェータ)
・長さは原文等の式より最小1.33mですが・・・・太く、長いほうが容量が大きくコイルの巻数が減る。
・太く、長いほうがVSWR1.5以内の帯域が広くなる。
・今回は軽く作らなければいけない・・・  
以上を考慮し16Φ、肉厚1mm、長さ1mと13Φ、肉厚1mm、長さ1mを組み合わせ、設計値として1.8mとする。
・容量は平均径を15Φと考え、式及び表から20PFと読む。(誤差は充分コイル巻数、エレメント長さで吸収される)
・スライド調節はタップビス方式で長穴なしでOK。前回7MHzはホース・バンド方式  

A 共振コイル
・インダクタンスは式より 101μH となる。
・塩ビ管VP−16に直巻きでは径が細いので、50Φの醤油ケースがP.P製なのでこれを利用した。(100円ショップ)・巻線は1.4Φのポリウレタン線を使う事にした。(太さは1.0Φ以上あれば問題なし)
・巻き始め、巻き終わりに小さな穴をあけ、ポリウレタン線を緩まないように固定してください。
・以上から空芯コイルの設計数値に各データを代入すると69.1回となる。 (Webで検索すると数種類あります。)  
以上を考慮し巻数を72回で2T毎にタップを出しておく62回まで6ヶ。
・結果的にはエレメントまでの長さ、同軸芯線の長さ、ボビン、2液エポキシの固定などの要素で66回でした。  

B 同軸ケーブル (カウンターポイズ)
・原文がカウンターポイズと書いてあるので誤解され易いですが、これはダイポールの片側エレメントとして考える。
・上記よりこの同軸は金属物や壁等への密着、とぐろ巻きを避けて、出来るだけ空間に高く架線してください。
・長さは式より16.43mですが最初16.8mでトライし16.6mに短くしても大きな変化はありません。  
以上を考慮して長さは 16.6m としました。
・架線は各自の都合もありますので上記を参考に工夫してください。(当局の概観図を参考にしてください。)  

C RFチョーク 
・これは高周波をストップさせるのと、このアンテナの全体のインピーダンスマッチングを取る為のユニットです。
・このRFチョークの無線機側が無線機から見た第一給電点です。同軸の芯線を繋いだところが第二給電点です。
・ここで送信時の20数%を消費しますので、熱損失に注意してください。1.5D-2Vで連続50Wまで問題ないでしょう。
以上を考慮して トロイダルコア:FT-240-43に同軸ケーブル:2D-QSを15回巻きました。
・巻き方向は変えずそのままストレート巻きです。
・結束バンドで巻き始め、巻き終わりを締める。
その後ろに50Ω-50Ωのソータバランとしてフェライト棒にその同軸を17回巻きます。(CMFとして有効)
・なくても良いですが、蛍光灯によるチェックでは見事に棒の半分も行かない内に消えますので、インターフェア対策としてお勧めします。

アンテナの立上げ
・上記の主要パーツを作り、仮設置して同調点を確認してください。コイル、エレメントのユニットを木などに取り付け同軸ケーブルは1〜2m地面より浮かして(あまり慎重でなくて結構です)アンテナ
・アナライザーやディップメーターで確認します。コイルのタップ位置や変化量、エレメントの伸縮による変化量などです。(同調周波数を重点にする)
・本設置を行います。強度面や安全性等を充分確認してください。
・調整の時はRFチョーク付近2〜3mは同じ環境になるようにして、上げ下げ、コイルのタップ、エレメントの長さで追い込んでください。
・概観図のシートにいろいろ書いてありますので参考にしてください。

調整と完成
・出来るだけアナライザー又はディップメーターで同調周波数を先に追い込んでください。
・測定は任意長の同軸を付けてRFチョークから離れて測定してください。
・コイルのタップで希望周波数の±20KHz位に合わせます。(私の場合は1Tで約20KHz動き、最終66回でした。)
・エレメント長で15KHz/1cm位で合わせられます。(私の場合は1cm伸ばしました。)
・これでほとんど問題なくVSWRが1.3以内になります。(私の場合はアナライザーで1.3、10W送信時1.05でした。)
・RFチョーク付近には出来るだけ誘電物が近寄らない工夫をお願いします。見掛け上のVSWRや帯域が広い状態になりますが、ロスで良く見えるだけですので注意が必要です。・無線機による追い込みはアンテナチューナーを動作させないで、他局に迷惑にならないよう低い電力でお願いします。・送信時のVSWR計で最終確認をしてください。トロイダルでの電力消費がインピーダンス合わせに働き、良くなります。
・上記の確認が出来たら、数日後コイルを2液エポキシで数箇所固定します。またコーキング剤でエレメントの繋ぎやコイルカバーの上、塩ビ管との繋ぎなど防水処理をしてください。
・晴れた日と雨、雪の日では15KHz程低くなりますが、帯域が広いので実用上全く問題ありません。

製作後記
・このアンテナは非常に素直な特性で、短縮DPとしては耳が良い、帯域が広い、再現性が高い、工作が簡単等メリットが沢山あります。
・自分のアイディアが入れられます。基本ダイポールアンテナの原理原則を体感できます。
・今回はコイル、エレメントのユニットで700gに出来ましたが、もう少しエレメントを太く、長くしたかったです。
・まだ検証中ですがアナライザーのR表示、X表示が整合状態と少しズレているようなところがまだ解明できません。皆さんの追試により、ご指導戴ければ、大変嬉しいのでお願いします。
・もっともフルサイズのダイポールでも多少のズレや雨によるズレはあります、気にする範囲では無いかもしれません。

とにかく簡単に安く3.5MHzでQRVできます。皆さんとお空でお会いできるのを、お待ちしております。

製作要領・データ